四つの言語を国語とするスイスの文化  

フランス語レッスン担当 麓 絵里  ジュネーヴ発 

別れ際のあいさつ



 日本語の「さようなら」に相当するフランス語は、Au revoir(オールヴォワール)ですが、この一言で別れ際の挨拶が終わらないところが、日本語と異なるところです。単に「さようなら」だけでは、おしゃべり好きなこちらの人は物足りないと思うのか、Au revoirや若者の挨拶Salut, Ciao, Adieuに前後して付け加える第2の別れ際の挨拶がたくさんあります。例えば、Bonne journee (ボン・ジュルネ)「良い一日を」Bon apres-midi (ボナ・プレミディ)「良い午後を」Bonne soiree (ボン・ソワレ)「良い夜を」Bon week-end (ボン・ウイーケエンド)「良い週末を」Bon dimanche (ボン・ディモンシュ)「良い日曜日を」などが代表的です。Bonne fin l'apres-midi「良い夕方を」など、相当細かい表現もありますが、そこまでこだわらなくても良いでしょう。別れ際の挨拶の準備にばかり気が取られて、大事な話を聞き逃してしまうことになりかねません。これらの表現は、ひとつひとつ短くて、覚えやすのですが、タイミング良く相手の注意をとらえながらなめらかに言えるようになるには、少し時間がかかります。例えばスーパーで支払いを済ませ、お釣りとレシート受け取る際に、頭の中でお釣りが合っているかどうか確認しながら、レジの人を見て、Merci. Au revoir. Bonne journee!と一気に、さりげなく、しかも微笑みながら言えるようになるには、私の場合結構時間がかかりました。もう夕方なのにBonne jounee と言ってしまったり、途中で舌がもつれて、相手どころか自分で自分が何を言っているのか分からくなってしまったり。特に最初の頃は、緊張のあまり一言も言葉が出ず、何も言わずにこわばった顔のままレジを通り過ぎてしまって、後でひどく後悔したものです。

親しい間柄なら、A bientot!(ア・ビアント)「近い内にね」、A la prochaine.(ア・ラ・プロシェン)「またこの次に」などと付け加えます。食事会などで新しく知り合った人との別れ際、この人とは再会したくない、と言って悪い印象も与えたくない、こういう場合は、代わりにBonne rentree(ボン・ラントレ)「お帰りに気を付けて」と言って誤魔化すこともできます。もちろん相手のことがとても気に入った場合は、その気持ちを込めて A bientot! Bonne rentree! と、惜しみなく両方言えばいいのです。再会の日が分かっている場合には例えば、A samedi.(ア・サムディ)「土曜日にね」などと言います。この次いつ会うか分からない時、よくOn s'appelle.(オン・サペル)「連絡し合おうね」と言う人がいますが、この場合、相手から連絡が入ることはまず無いと考えて良いでしょう。「on」はフォーマルな「nous」(私共、私達)をよりカジュアルに表現する、一人称複数代名詞ですが、不確定人称名詞としても使われます。そう、「不確定な人が連絡し合う」とは「だれも連絡しない」、と解釈するのが確実です。


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