自然分娩とは
自然分娩とは、分娩を出来る限り自然にまかせ、自然の陣痛発来を待ち、不要な手を加えない分娩と言われています。このことは大切なことだと思いますが、あまりこだわりすぎない方がよいかと思います。不要な手を加えないということは必要ならば手を加えるということです。それではどこまでが不要でどこからが必要な手でしょうか。
たとえば、教科書的には分娩予定日が2週間過ぎまでは正常の範囲の分娩(正期産)と言われています。自然がよいと言うことで、予定日の2週間過ぎまで待って自然陣痛が発来したら羊水混濁(羊水がにごる)となり、胎児心音が悪くなり緊急帝王切開ということは、注意をしないとありうることなのです。
本当は、妊娠38週の分娩が母児ともに一番安全
ぼう大な統計から妊娠38週の分娩が母児共に一番安全であるといわれています。産後の出血量も少なく、胎盤の働きも生き生きとして勢いがあり、羊水もたっぷりあるため分娩中のクッションにもなり,臍帯(へそのお)や胎盤が圧迫されることも少なく、分娩経過中も胎児の状態は一番よいと言われています。 だからと言って、胎児も小さく、児頭も下っていないで、子宮口(子宮の出口)も硬く厚いのに無理やり陣痛促進剤を使って分娩を誘発するのは無謀です。
分娩で大切なのはタイミング
しかし、前述のとうり、予定日が過ぎると胎盤の働きが低下(老化)し、羊水も減少するので、分娩は赤ちゃんにとって負担が大きくなります。
私の長い経験から、おおむね、予定日の10日すぎからは日一日と、2週間過ぎからは時間単位で胎児の状態は悪くなる印象があります。
つまり予定日を過ぎた日から胎盤の働きや羊水量といったものが少しづつ、胎児にとってよからぬ方向へ動いているということです。
自然にこだわって(ぎりぎりまで自然の陣痛が来るまで放っておく)、赤ちゃんが大きくなりすぎたり、心音不良になり、緊急帝王切開となってしまっては、まさに人工的な分娩という皮肉な結果になってしまいます。
それぞれの妊婦さんにあった、スムーズでより自然に近い分娩経過をたどるようにしてあげることが本当の自然分娩ではないでしょうか。それが成熟期誘導分娩です。
成熟期誘導分娩
分娩が近づいてくると個人差はありますが、妊娠37週頃から児頭(赤ちゃんの頭)が骨盤の中に少しずつ下がってきて子宮口(産道)も少しづつゆるんできます。これを子宮口が熟化するといいます。こうした内診所見と赤ちゃんの大きさ(推定体重)、おかあさんの年令や骨盤の広さ、合併症を持っているかどうかなど多くの条件を組み合わせて、その人にとって分娩の最適と思われる時期を見計らって、ごく穏やかな方法で分娩を誘導する、これが成熟期誘導分娩です。もちろん、ご本人、ご主人の同意を得て行います。 初産の分娩が特に大変なのは硬くて厚い子宮口がなかなか開かない事に原因があります。この子宮口さえ軟らかく薄くなり開けば分娩時間を短縮することが出来ます。成熟期誘導分娩では穏やかな方法で一晩かけてゆっくりと子宮口を開きます。分娩当日の朝には4〜5cm開いています。この状態からさらに子宮口をやわらかくし、穏やかに陣痛を発来する作用のあるお薬を飲んで進行状態にあった陣痛に調節します。厳重な管理のもとで行います。こうした方法で分娩時間を半分から3分の2程度に短縮できます。 成熟期誘導分娩のよい点
さらに成熟期誘導分娩にはよい点があります。それは、ほとんどが診療時間内の分娩となるということです。緊急性の高い分娩においてこのことは大変大切なことです。
もちろん、産科の医療施設は24時間体制でやっています。しかし夜中や祭日など休診日より診療時間の方がスタッフの数を含め、いざというときの機動性は患者さんにとって有利であることは言うまでもありません。費用の点でも休日加算や深夜料金が不要となり有利です。また、昼間の分娩となりますから、途中で無痛分娩に切り換える事も可能です。このように多くの点で成熟期誘導分娩はすぐれた分娩方法であると考えています。 |