陣痛の苦しみは本当に生理的?
特に初産の人の陣痛の苦しみは相当なものがあります。
数分おきの強い子宮収縮が10数時間続くわけです。動物の分娩に比べそのつらさは何倍にもなります。昔から、これは生理的な営みで、自然の摂理が人類に与えたもので、この苦しみを体験するからこそ母と子の絆ができるのだと受け入れてきました。
なぜここまで動物に比べ人間の分娩は大変なことになったのでしょうか。
1つには人間が直立歩行をするようになり、重力で早産しないよう、子宮口が硬く厚くなって開きにくくなったこと、今1つは、人間は知能が発達し頭が大きくなり産道を通りにくくなったためです。
動物の赤ちゃんは生まれてすぐ歩きますが、人間の赤ちゃんは歩くまで1年かかります。つまり人間の赤ちゃんは本来生まれるべき時期より1年も早く未熟な状態で生まれて来ているということです。 そうしないと、頭が大きくなりすぎて産道を通れなくなってしまうからです。かといって、今よりもっと早く生まれれば動物なみの楽な分娩が出来るかもしれませんが、そうなると未熟すぎて成長出来ず死んでしまいます。健康で育つぎりぎりの未熟性を持って生まれてきているということです。ですから、その分母親にめいっぱいの努力を強いているわけです。
これは果たして生理的といえるのでしょうか!
痛みをやわらげる事は悪いことなの?
このような苦しみを味わなければ本当の母性が生まれないのでしょうか?
そんな事はありません。むしろその逆もありうると思います。
京都大学の名誉教授で霊長類研究家の大島清先生は、京都のある病院で硬膜外麻酔による無痛分娩をご覧になり、その印象を次のように述べています。
『母親の表情には疲労のかけらもない、慈しみのまなざしが心を打つ-------胎外胎児を新生児室に預けて、ああ楽だ、この病院は親切だと信じている母親は出産で長時間無用な労働を強制されてヘトヘトになっているせいではないだろうか。今欧米ではほとんど100%硬膜外麻酔出産と聞いた。出産について考えさせられるひと時だった。』
と肯定的な見解を示しています。
近年では、それでも少しでもその苦痛を緩和しようと、ラマーズ法、ソフロロジー、といったリラキゼーションやイメージトレーニングが取り入れられ、効果もある様です。
当院でも、長年ラマーズ法を取り入れていますが、痛みを和らげることはそう簡単ではないようです。 特に最近は昔に比べ”がまん”とか”辛抱”するような生活環境ではなくなりました。また出産年齢も高齢化してきています。
そうした中で分娩の苦痛だけは昔ながらで益々きわだって来ています。
もう少し合理的な苦痛の緩和方法はないのでしょうか。 あるのです。それが硬膜外麻酔による無痛分娩です。
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